CASE STUDY

海と島の魅力を届けたい!
水上ドローンが運ぶモノ・人、そして未来

株式会社エイトノット×
広島商船高等専門学校×大崎上島町

海をきっかけに出会ったスタートアップ企業と高専と町。
サンドボックス事業の1つ「D-EGGS PROJECT」でマッチングしたこの3者が、
海を航る新しいモビリティ。その先駆けとなる水上ドローンを、
未来を担う若い世代も大いにサポートし、実証実験を行います。

エイトノット ロゴ

株式会社エイトノット

「ロボティクスとAIであらゆる水上モビリティの自律化する」ことをミッションに設立された自律航行技術開発のスタートアップ。ロボティクスに精通したメンバーで構成されたチームで、2025年の自律航行船の社会実装を目指す

https://8kt.jp

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広島商船高等専門学校

広島県豊田郡大崎上島町にある日本の国立高等専門学校。商船学科、電子制御工学科、流通情報工学科、専攻科がある。

https://www.hiroshima-cmt.ac.jp/

大崎上島町

広島県豊田郡の町。竹原港、安芸津港からのフェリーで約30分の、芸予諸島の中程に位置する大崎上島などを町域とする。造船業が盛んで、島内浦々に造船所がある。

https://www.hiroshima-cmt.ac.jp/

OVERVIEW

自律航行EV水上ドローンで物資輸送を支援。
移住者をも惹きつけるスマートアイランドへ

海や自然に囲まれ、のんびりとした時間が流れる離島の生活。しかし高齢化や人口減少によって、本土への航路を結ぶ大型フェリーは利用者も便数も減ってしまい、さらにフェリーの管理コストが大きな負担となっています。

海の魅力、島の魅力はたっぷり。でも交通が不便。もしも必要なときに必要な場所へ、人やモノを運べたら…。
そんな未来に向けて、ひろしまサンドボックスのアクセラレーションプログラム、D-EGGSで最終採択30件に選ばれたこのプロジェクト。今後この実証実験では水上ドローンが自律して航行し、まずはモノを運ぶことを目指します。モノが運べたら、その技術を応用していずれは人も運べるようになり、最終的には、いつでも呼べば来てくれる無人の水上タクシーができるかもしれません。

INTERVIEW

マッチング事例 株式会社エイトノット

海や島の魅力をもっと多くの人に知ってほしい。
水上ドローンをきっかけに、地域の活性化まで目指しています。

株式会社エイトノット

木村裕人さん

マッチング事例 株式会社エイトノット

社名「エイトノット」の由来を教えてください。

「エイトノット」は、海に関わる業界ではよく使われるロープなどの8の字結びのことです。これまで水上モビリティに関する事業を行っている中で、海が島と人とモノを隔ててしまっていると感じていました。その隔たりを越えてもっと結びつきができるように、自由に移動や輸送ができるための橋渡しをしていきたいんです。また、自律航行技術というこれまで誰も成し遂げていないことを実現するために、社内も強い結びつきでワンチームとなって取り組もうという思いを込めました。
もともと海やマリンレジャーが好きで、海の魅力をもっと知ってもらいたいという気持ちも大きかったですね。

なぜ広島、大崎上島で?

まず、歴史的に造船や船での移動が盛んに行われてきた地域の中でも、瀬戸内海は波も穏やかで、特に広島県には人口の多い島もあります。さらに、今回のひろしまサンドボックス事業やD-EGGSなど、先進的な取組みを積極的にサポートしてもらえる環境が整っているということも大きいですね。

大崎上島町と広島商船高専は県の事務局がマッチングしてくれて、どちらの方も私たちの思いを受け止めてくれました。今後も積極的にご協力いただけそうで、とても心強いです。さらに、当社の技術責任者である横山は、広島商船高専の出身なんです。5年間大崎上島に住んでいた彼の経験も、今回の実証実験には大いに活きると思います。
海に関しては、私たちよりも広島商船高専の皆さんの方が知識や経験が豊富です。学生たちには実験の技術支援や島内の環境調査だけでなく、島民としても参加してもらう予定としていて、とても頼もしいチームです。

マッチング事例 株式会社エイトノット

実証実験が終わった後はどうなっていきますか?

最終的には、タクシーのようにスマートフォンアプリで呼べるサービスを作りたいと思っています。そのためには使いやすさや安全性などを高める必要がありますので、実用までにはまだまだ時間がかかります。まずはモノを運ぶサービスを確立して、島民の皆さんの暮らしに貢献しながら、さらに技術を磨いていきたいと考えています。

海や島の未来はどうなっていくのでしょう。

以前、竹原港に行ったとき、「たけはら海の駅」のレストランで食事をしたんです。レストランを運営する株式会社ファームスズキは、大崎上島特有の環境を活かして牡蠣養殖などをされていますが、それがとても美味しくて。瀬戸内海にはまだまだたくさんの魅力が詰まっていると改めて感じました。移動が便利になれば、もっと多くの人に島を訪れてもらうきっかけになると思います。
リモートワークが浸透してきたこともあって、地方移住への関心が高まっています。環境はとても良いのに、移動の問題がハードルになって島への移住を諦められては残念です。自律航行技術が普及して、島を移住先としても考えてもらえるようになって、地域の活性化にもつながったら嬉しいです。

マッチング事例 株式会社エイトノット

学生たちが「未来」に触れる機会に

広島商船高専

講師 岸拓真さん
商船学科5年生 鳥居さん

広島商船高専のこと、今回のプロジェクト参加までの経緯を教えてください!

岸さん)本校は、国立高等専門学校機構が行うプロジェクト「COMPASS5.0(次世代基盤技術教育のカリキュラム化)」のIoT分野拠点校に採択されています。これは全国の高専のうち2校しか選ばれていないもので、DX時代に向けてITを今以上に活用できる新たな人材を育成する機関として、教育の高度化を図っています。また本校は学科が3つありますが、その共通テーマが「モビリティ」ということ。さらに「エイトノット」の横山さんが本校卒業生ということもあり、いろいろな偶然が重なって、実証実験に参加することになりました。

たくさんのご縁がつながったんですね!3つある学科は、それぞれどのように実証実験に携わりますか。

岸さん)まず商船学科では、船の運航に直接関わることでお手伝いします。乗組員などを目指す学科ですので、新たなモビリティの知識を得られるということはとても貴重な経験となります。さらに電子制御工学科は基盤やシステムなど電気系の専門知識や技術を、また流通情報工学科は物流やネットワークに関する専門性を活かしていきます。
「エイトノット」さんが持つ専門的な知見で本校の教育にご協力いただき、本校も実証実験を支援する。互いに支え合う関係を目指しています。

鳥居さんも実証実験に参加されているんですよね。

鳥居さん)将来、船長のアシストをする水先案内人を目指して勉強しています。その知識を活かして、実証実験を行う海の海図上に、危険な箇所などを探してプロットしています。
自律航行技術の実現には安全性がとても重要です。漁業者に迷惑をかけないためにも、水上のブイや水中に仕掛けられている漁具を見つけて避けることが大きな課題だと考えています。

マッチング事例 株式会社エイトノット

学生さんにとっても貴重な経験ですね。

岸さん)学生たちも興味を持って主体的に考え、課題と解決策を考えてくれています。とやかく言う前に体が動く学生も多くて、「エイトノット」さんも学生の挑戦を快く受け入れてくれるんです。
デモ航行が行われるときは学生たちにも見てもらって、未来の水上モビリティを生で体験してもらうことで今後の交通課題を考えてほしいと思っています。島ではどうしても交通の便が悪いですが、学生や若い人にも島の良さを知ってもらうためのきっかけになってほしいですね。
正直「本当にできるの!?」と思うほど、小型の船でのこのような実験は例がないことです。次の時代に進むための大きなチャレンジをこの場所でしてもらえることは、本当にすごいことだと思います。貴重な機会に感謝して、実証実験後も「エイトノット」さんとは一緒に高め合っていける関係を続けていきたいです。

マッチング事例 株式会社エイトノット

実証実験の場となる町。大崎上島町の川本さんにお聞きしました

大崎上島町 企画課長

川本さん

スマートアイランドを目指す実証実験の舞台になりますね。お話が来た時のことを教えてください。

実は過去にも別の実証実験が島内で行われたのですが、当初想定された成果には及ばなかったり、結果的に実験が行えない事態になったりということがあったんです。そういう経緯もあって、今回の実証実験のお話を聞いたとき、あまりいい印象を持っていませんでした。でも水上交通は町としても大きな課題ですし、今回の実験には明るい未来を感じました。さらに「エイトノット」さんに広島商船高専出身の方がいらっしゃるというご縁があり、また木村さんの真剣な姿勢も感じて、参加させてもらうことになりました。
役場としては町民の皆さんへの周知や協力のお願い、「エイトノット」さんと地域との仲介など、実証実験を側面的に支援していきます。また役場内では、観光やIT、移住や交通に関わる部署から、若手職員にも意見交換に参加してもらう予定です。
船の便の都合でカープのナイター観戦も最後まで見ることができず、気軽に行けないし、通信販売を利用すると配送料が「離島料金」になる。島ならではの不便さはたくさんあります。今回の実験後も、自律航行技術の実用化に向けて町としても可能な限りサポートしていきたいと思っています。交通が便利になって、「大崎上島町に住んでみようかな?」と思ってもらえるようになったら嬉しいですね。

 

事務局後記

今回の事例では、海をきっかけにたくさんの縁がつながって、スタートアップ企業と高専・学生と町が出会いました。インタビューした方は、海が好きな方ばかり。「海が好きじゃなきゃ島には住めないですよ(笑)」とも言われたくらいです。
私も海を眺めてのんびり過ごす時間にあこがれる1人ですが、移住となると話は別。やはり不便さを考えてしまいます。この実験に携わる学生さんたちが大人になる頃、島の暮らしはどうなっているのか…。自律航行の船で本土と島を行き来する、そんな夢が膨らみます。

マッチング事例