CASE STUDY

50年後の未来をデザインする
靴下×デジタル技術

株式会社横山セイミツ×
イノベーションハブ広島Camps

自社のアップデートを目指して、ひろしまCampsや県のアクセラレーションプログラム「ビジネス実験部」に参加した創業150年以上のものづくり企業。そこでの出会いと自社の発明が、「D-EGGS PROJECT」での実証実験というネクストステップにつながりました。

株式会社横山セイミツ

明治2年創業し、針・ワイヤー・ピン製造加工技術を持つ歴史あるものづくり企業。カープグッズをはじめ、新商品企画開発にも力を入れている。

http://yokoyamaseimitsu.com/

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イノベーションハブ広島Camps

イノベーションハブ広島Camps

県が運営する新たなビジネスや地域づくりなどにチャレンジする多様な人が集まるイノベーション創出拠点

https://www.camps-hiroshima.jp/

OVERVIEW

デジタル技術を掛け合わせストレッチで、元気な社会づくり

デジタル技術の進化で、仕事でもプライベートでも座っている時間が長くなりました。運動不足や姿勢のゆがみなど、健康への影響も少なくありません。また、年齢を重ねると、小さな段差でもつまずきやすくなり、転んで骨折して寝たきりになる例もあります。

家にいる時間が長くなったことからも健康意識が高まり、多くの方が「運動しなければ」と思っています。しかし、ウォーキングや筋力トレーニングを始めては見たものの三日坊主に終わった経験、ありませんか。
横山セイミツでは、履いて引っ張るだけでストレッチや筋トレができるソックス「ストレッチソックス」を考案。大学やプロアスリートトレーナーなどと共同で開発しました。足関節の可動域が広がるだけでなく、歩く姿や姿勢の美しさにもつながります。さらに、理学療法士AIによりトレーニングの効果を可視化。モチベーションの維持につながります。
簡単に続けられる「ストレッチソックス」が、ひろしまサンドボックスのアクセラレーションプログラム、D-EGGSで最終採択30件に選ばれました。

INTERVIEW

株式会社横山セイミツ 代表取締役 横山宗治さん

常にアップデート!若い世代と一緒に、50年後をデザインしたい。

株式会社横山セイミツ

代表取締役 横山宗治さん

町工場から新たな挑戦を始めたきっかけを教えてください。

外資系の銀行などを経験したあと広島に戻り、その数年後に父が亡くなりました。そこで会社を引き継いだのですが、それは同時に会社の社会的責任も引き継ぐということだったんです。さらにそのとき、いずれは私が引き継いでもらう立場になるんだということも実感しました。
次世代につなぐということは、そもそも若い人材がいなければ、成しえないことだと認識したんですね。では、若い人が集まってくれる環境にするためにはどうすればいいのか考えるようになりました。それは、技術力とか価値創出といった社会的役割の観点ではなく、そもそも1日の時間のうち3分の1も会社にいるわけですから人生において有意義であること、ウェルビーイングというか、シンプルに「楽しめる」環境であるべきだということだったんです。そのために会社もどんどんアップデートしていかなければと思いました。

どんなことからアップデートしましたか。

まず手始めに、他社や業界を調査したり、新しい人材を登用したりしました。そして自社の分析をしていくと、自分たちの強みに気づくことができたんです。自分たちにもできることがあると気づき、2009年に「赤ヘル耳かき」を発売しました。形の異なる2本セットで、1本目は「スターター」として広くおそうじ、2本目は「クローザー」としてきっちりおそうじするという商品です。ただカープのマークを入れたグッズではなく、野球のストーリーになぞらえ、パッケージも工夫して、知的財産権も取得しました。

このような発明を社内に促したくて、広島県発明協会の協力で職務発明取扱規程も作りました。発明者には利益の0.3%が支払われるのが一般的のようですが、当社ではそれを3%にしました。人材や資源の少ない会社では、技術者が営業もするなんて普通のことです。そんな中で商品開発もしたとなれば、相応のロイヤリティを受け取るべきだと考えました。
ものづくりに携わる人にしかできない発明がある。それをおもしろいと思ってくれる若い人たちが集ってくれたら、会社の将来も明るくなると思っています。

新しい取組みの中で、壁はありましたか。

開発のために社内で議論していると、自分たちだけでは分からないことや、自社の資源だけでは成し遂げられないアイデアがたくさん出てくるんです。そこで私は積極的に社外の人や機関と関わるようになりました。ひろしまCampsや「ビジネス実験部」に参加したのもそんなときです。

マッチング事例 株式会社横山セイミツ
マッチング事例 株式会社横山セイミツ

「ビジネス実験部」では、学びと同時に新しい出会いもありました。そこで知り合った方々は、オフラインでの活発な交流が難しくなった今となっては、かけがえのないハブであり今のリソースに直結するご縁も数多く生み出すことができました。今回のプロジェクトもこの「ビジネス実験部」という広島県イノベーション推進部によるプログラムに参加していなければ、到底組み立てることはできなかったのではないかと思っています。

「ビジネス実験部」での出会いで新しい道ができたんですね!ほかにも「ビジネス実験部」で得たことがあったとか。

高齢者向けに新しいサービスを作っていきたいと思っていたちょうどそのとき、「ビジネス実験部」で、日本社会全体の問題を含めて高齢者が抱える課題を知ることができました。また同じ時期に、親戚のおばあちゃんが数センチの段差につまずいて転倒し、骨折してしまったんです。幸いそのおばあちゃんは寝たきりにはなりませんでしたが、転倒により寝たきりになる例もあることを知り、「50年後、転倒がきっかけで寝たきりになる人をゼロにする」というビジョンができました。

そこで、まずは「そもそもなぜ転びやすくなるのか?」ということを考えはじめました。私の仮説は「足首の関節の可動域がせまくなるとつまずきやすくなる。可動域を広げるためには前屈によるストレッチが有効」ということでした。人間が二足歩行する仕組みなどを大学で学んだ経験が活きました。次は自分の体で実験です。私は前屈が苦手で、最初は指先とつま先の距離が15㎝ほどありましたが、実験することが楽しくて毎日前屈していたら3か月後につま先に届くようになり、今では手の平が地面につくようになりました。柔らかくなっただけでなく、腰痛がよくなったりこむら返りが起こらなくなったり、さらに妻から「姿勢がよくなった」と言われたんです。これは仮説以上の成果ですね。ここから「ストレッチソックス」の開発につながっていきます。

ストレッチソックス

仮説と実験。科学的ですね。

ビジネスはサイエンスだと私は思っています。仮説を立てて実験し検証する、そして正解がない。これまで培ってきた実績や仕事も大切なので、既存事業にはつい保守的になりがちですが、若い人たちにも実験と検証を楽しんでもらいたいですね。いわゆるZ世代と言われる人たちと話していると学ぶことばかりで、若い人たちにしかできないことも多いんです。契約とか法律とか財務とか、そういうところは我々が支えますから、若い世代にはどんどん挑戦してもらいたいと思っています。
D-EGGSは、若い人たちと一緒に実証をして掘り下げ、作り上げていくことができる貴重な機会だと思って応募しました。最終の30案に採択されて、「やってみなさい」と天の声に言われている気がします。

※D-EGGS PROJECTとは、「ひろしまサンドボックス」のネクストステップとして、令和2年11月26日からスタートしたプロジェクトです。コロナ禍のニューノーマル時代を再定義するアイディア(製品やアプリ・製品など)を全国から広く募集。募集したアイデアから30件を採択し,県内外のプレーヤーの共創によるプロトタイプ開発から県内フィールドでの実証実験を1件当たり最大1,300万円の支援に加え,県外企業向けには最大1,000万円の滞在経費も支援するアクセラレーション・プラグラムです。詳細はこちらから(https://newnormal.hiroshima-sandbox.jp/

 

事務局後記

取材中、「本当は私より若くて頭脳明晰な社員が取材を受けた方がいいと思ってますよ」と笑う横山さん。何度も「アップデート」と口にされていたのが印象的でした。新しい人材を採用したときなど、社内では抵抗もあったそうです。それでも、会社や業界の社会的責任を本気で考え、新しいことにどんどん挑戦する横山さんだからこそ、ひろしまCampsや「ビジネス実験部」などでの新たな出会いにつながったのだろうと感じました。

マッチング事例