CASE STUDY

「ストーリー」で
価値を高めるものづくり企業のプロモーション

株式会社広島精機×マツダOB(ビジネス実験部)

モノは作った。ここからどうすれば…?
そんな悩みを解決するため、
ものづくり企業が県のアクセラレーションプログラム「ビジネス実験部」に参加。
そこでの出会いや時に厳しい意見をもらいながら、
新商品ができるまでの開発ストーリーをお聞きしました

株式会社広島精機ロゴ

株式会社広島精機

広島県廿日市市にあり、中国にも工場を持つ。歯車を主とした製品を製造しており、半世紀以上に渡って顧客のニーズに応えながら高精度な製品作りを行うエンジニア集団

http://hiroshima-seiki.co.jp/

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マツダOB(ビジネス実験部)

ビジネス実験部は、技術力とビジョンを持つ広島県内の中小企業が一堂に会し、共に新規事業を開発するオープンイノベーションプログラム。2019年9月から2020年2月6ヶ月、延べ8日間開催された。

OVERVIEW

だれもが考えなければならない災害への備え。
工場の備えに有効な「移動式ギヤポンプ」

近年、未曾有の災害が各地で発生していて、想定外の事態がいつどこで起きてもおかしくない状況です。数年前には、水害により工場から油が漏れ、住宅地に流れ込む事故もありました。企業においても、災害への対策が急務となっています。
そこで、広島精機では「移動式ギヤポンプ」をBCP対策として売り出しています。このポンプは、普段は倉庫などに保管しておいて、使うときは場所を選ばず素早く設置することができます。プールから油を吸い上げ、約4分で1000リットルのタンクが満タンに。あとはそのタンクを安全な場所に移動するだけ。プールの掃除や通常のメンテナンス時にも利用すれば、防災訓練にもつながり一石二鳥です。

INTERVIEW

株式会社広島精機 代表取締役 柳原邦典さん

モノの「作り方」と「売り方」。これからはそのどちらも重要です。

株式会社広島精機

代表取締役 柳原邦典さん

どのような会社なのか、教えてください。

終戦後間もなく、加工業を始めました。一般産業向けに、歯車の加工や、それを組み込んだ変速機や減速機をつくっています。
造船、医療、印刷、建設など数百の業種とお取引があって、北は北海道から南は鹿児島までお客様がいらっしゃいます。

幅広く展開されているんですね!今回のギヤポンプは、どういう経緯で開発されたのですか。

そもそもこのギヤポンプは、てんぷら油を回収してジェット燃料に変える事業者さんの依頼で、地面に固定して使うポンプとして開発しようとしました。しかし、てんぷら油を運んでくるタンクローリーが一カ所に停車できる時間に制限があるので、移動できるようにしてほしいと依頼をいただいたんです。そうして今回の移動式ギヤポンプが完成しました。
せっかく作ったので広く販売したかったのですが、どうやって売ればいいのか分かりませんでした。ものづくりは得意ですが、プロモーションは苦手なんです。会社としては、そういう点に危機感も持っています。

そのようなお悩みがあって「ビジネス実験部」に参加したんですね。

私のポリシーは「いつでもウェルカム」なんですが、そのおかげでたくさんの方とつながりができて、「ビジネス実験部」にもつながりました。
「ビジネス実験部」でも、マツダのOBなど様々な方と出会いました。そこで移動式ポンプの販促方法を相談したところ、「ただ移動できるというだけでは売れない」という厳しい意見と、「商品のストーリーが重要」というアドバイスをいただいたんです。ちょうどその年、他県で豪雨により浸水した工場から油が漏れて住宅や病院に流れ込むという事故がありました。そうでなくても最近では想定外の災害が各地で起こっていますので、企業でも災害対策が必要になっています。でもものづくり企業では、普段の仕事が優先になってしまって、実際に対策できているところは少ないのではないかと思います。そこで、災害対策としてこのポンプを使ってもらう「BCP対策用」というストーリーができました。危機感を持っている企業に、すぐにできる対策として訴えかけることにしたんです。ホームページやパンフレット、動画も作りました。これまでは紙のカタログをメインに使っていましたが、やはりこれからはインターネットを経由した販売が重要だということも学びました。

マッチング事例 株式会社広島精機
マッチング事例 株式会社広島精機

新たな挑戦ですね。ほかにも新しい取組みをされたとか。

当社では、減速機や変速機を造っているのですが、その技術を応用して塗料の攪拌機も造ることになりました。小さなものづくり企業はこれまで、大手企業から受注したものを黙々と造ってきましたが、これからの時代はそれだけではだめだということをひしひしと感じています。新しい分野にも挑戦して、メンテナンスや販売テクニックなども導入しながらものづくりをしなければならない。しかも大量生産ではなく小さな市場で勝負しているので、さらに厳しい時代に入っていると思います。

今後挑戦したいことはありますか。

サンドボックス事業で、別のコンソーシアム「つながる中小製造業」にも参加しています。ここでは、生産工程の最適化や業務効率化を目指して、まずは移動式ギヤポンプの耐久性をAIとIoTで予測しようとすることを進めています。これも新たな挑戦ですね。
これからも、販売戦略を立てられる方やウェブマーケティングに詳しい方と手を組んで、販売力を高めていきたいですね。ものの「作り方」はよく知っていますが「売り方」に関しては素人です。これまでの製造業ではあまり考えてこなかったことですが、成長していくためにどんどん取り入れていきたいと思っています。

 

事務局後記

新しいことに出会ったとき、ちょっとためらったり、否定的な気持ちになったりする方も多いのではないでしょうか。(私も未知の分野に踏み出すのは少し怖いです。)柳原さんが「ビジネス実験部」での厳しい意見も受け止め、アドバイスも取り入れられたのは、「いつでもウェルカム」という大きく構えるポリシーと、現状に満足せず前に進む姿勢があったからだと感じました。
小さな市場で地道に頑張るものづくり企業。でもそれだけではいけないと挑戦を続ける柳原さんから、インタビューを通して学ぶことがたくさんありました。

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